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宇宙の片隅に浮かぶ、とある星の小さな町で私たちは暮らしている。この星の人間は「大人」と「子ども」という二つの種類に分けられていて、この町には子どもしか住んでおらず、大人たちは街の外で暮らしているらしい。記憶があるうちにこの町の外に出たことはないが、ここは私たちが思っているよりもたぶんずっと狭い世界なのだろう。大人の姿を見たことはないが、ある基準まで年をとった子どもは大人になるためにこの街を出ていくので、少し背が高いだけで私たちと同じ姿かたちをしているのではないのだろうか。

私たちはどうして大人と切り離された場所で暮らしているのだろうと、たまに考えてしまう。一緒に暮らすことは、悪いことではないと思うのだけれど。

この町の端の方は海辺に繋がっていて、夜になると辺りがぼんやりと光り出してとっても綺麗だから、用もないのによく訪れてはぼーっと眺めたりする。なんで夜に光るのかはよくわからない。海の中は冷たくて健康に悪いから入らないでと言われているし、大人の書いた本を読んで調べても、そんなことに興味のある人はそもそもいないのか、誰にも触れられていない。

考えてみれば、ここで暮らしていて不思議に思うことがあっても、それを知れることなんてほとんどなかった。例えばで言うと、少し前までは朝昼晩は同じ期間で巡っていたと思うのだけれど、最近は数時間おきに昼夜が入れ変わったり、夜が明けない日が何週間も続いたりと、日の巡りが目に見えておかしくなってきている。でもどうしてかなんていうのはやっぱり知る由もないし、それに対する危機感のようなものもまるでないように月日は流れていっている。

もう、何を思っても仕方のないことなのかもしれないけれど。それでも余計なことを憂えてしまって、その度に自分の諦めの悪さが嫌になってしまうのだ。

とある星の少女の手記 より

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